自閉症の子の幼稚園の行き渋りは次の行動が分かると安心して登園しやすくなる
「園に行けば楽しいと分かっているのに、どうしてママと離れる時だけグズるの…」
泣きながら登園するわが子を見るのは本当に辛いし、悩ましいですよね。
実は、行き渋りがあるからといって、幼稚園や保育園が嫌いとは限りません。
園では楽しそうに過ごしているのに、朝だけ泣いてしまう子もたくさんいます。
そんな時に注目したいのが、「行くこと」ではなく「切り替えること」。
自閉症の子の行き渋りが落ち着きやすくなる理由のひとつが、「切り替えのスイッチ」を作ることです。
切り替えのスイッチとは、「ここで終わり」「次はこれ」が分かる合図のこと。
自閉症の子は、先の見通しがわからない状況に不安を感じやすい傾向があります。
特に朝は、「いつママと離れるのか」「次に何が起きるのか」が曖昧だと、不安が大きくなり、行き渋りにつながりやすくなります。
切り替えのスイッチがあると、
「これをしたら幼稚園へ行く」
「これをしたらママとバイバイする」
という流れがはっきりします。
終わりのタイミングが明確になることで、子どもは安心しやすくなるのです。
さらに、毎朝同じ流れを繰り返すことで、行動がルーティン化されます。
たとえば、大人でも毎朝同じ順番で身支度をすると、自然と仕事モードになりますよね。
子どもも同じです。
考えなくても体が自然と「幼稚園モード」に切り替わるため、登園時の迷いや不安が減りやすくなるのです。
切り替えのスイッチは、子どもだけでなく、ママの気持ちを支える役割もあります。
「まだ泣いているから」
「かわいそうだから」
と別れを延ばしてしまうと、子どもはかえって切り替えに時間がかかることも。
あらかじめスイッチを決めておけば、ママも迷わず笑顔で送り出しやすくなります。
つまり、行き渋りを落ち着かせるためには、「頑張って行こう」と気合いで促すよりも、子どもが安心して気持ちを切り替えられる仕組みを作ることが大切なのです。
幼稚園で離れられなかった息子が切り替えスイッチで自分から登園できた話
私には幼稚園に通う自閉症の年長の息子がいます。
息子の行き渋りは、気がつけば4年目になっていました。
年中の頃も行ける日と行き渋る日の波が大きく、年長への進級と同時に再び行き渋りが強くなりました。
就学まで残り1年を切ったこともあり、私はこれまで以上に焦りを感じていたのです。
行き渋りについて調べ、先生との連携やスキンシップ遊び、療育整体など体へのアプローチ、肯定の声かけなど、できることはたくさん試してきました。
それでも、どの対応が今の息子に合っているのか、自信が持てなかったのです。
今川ホルン先生からのアドバイスで、ポケモン好きの息子にポケモンGOを取り入れると、幼稚園の門まではスムーズに行けるようになりました。
ところが、教室に入ってからが長いのです。
私から離れられず、気づけば10時近くまで教室にいることもありました。
でも、不思議なこともありました。
泣いて別れた日でも、10分ほどすると楽しそうに過ごしているのです。
先生からも、
「その後はいつも通り遊んでいますよ」
と言われていました。
「行ったら楽しめるのに、どうして離れられないんだろう」
発達科学コミュニケーションで学び始めて2年が経っても続く行き渋りに、私は焦りと不安を募らせていました。
そんな時、たまたま雨の日に園バスを利用する機会がありました。
すると担任の先生から、
「息子さんが乗るバスだと、他の子たちより早く登園できるんです。朝はバス通園にしてみませんか?」
と声をかけてもらったのです。
先生のお話を聞きながら、私は朝の息子の様子を思い返していました。
息子は朝、たくさんの人に話しかけられることが苦手でした。
大好きなお友だちに会っても私の後ろに隠れたり、玄関に人が多いと外へ出たりすることもよくありました。
そして、ふと気づいたのです。
私はずっと
「幼稚園へ行きたくないから行き渋るんだ」
と思っていました。
でも実際は、園に行った後は楽しそうに過ごしています。
お友だちも好き。
先生のことも好き。
もしかしたら息子が困っていたのは、幼稚園へ行くことではなく、朝の切り替えだったのかもしれない。
人がたくさんいる玄関。
次々に話しかけられる環境。
ママと離れるタイミング。
息子にとって負担だったのは、「行くこと」ではなく、「切り替えること」だったのです。
そう考えて、バス通園を始めてみることにしました。
すると変化はすぐに現れました。
バス停に着いたら、その日ポケモンGOで捕まえたポケモンを一緒に確認して、
「今日はこのポケモンが嬉しかったね」
と話をする。
そしてポケモンGOを終わりにする。
そんな流れが自然とできあがっていました。
このあと、正直そのままバスに乗れるとは思っていませんでした。
ところが息子は、自分からすんなりバスに乗っていったのです。
しかも、窓越しに手を振ってくれました。
思わず胸が熱くなりました。
今思うと、息子にとっての切り替えスイッチは「園バスに乗るまでの決まった流れ」だったのです。
ポケモンGOが終わったらバスに乗る。
バスに乗ったら幼稚園へ行く。
毎朝同じ流れがあることで、次に何が起きるのかが分かりやすくなり、安心して切り替えられるようになったのだと思います。
さらに嬉しかったのは、スムーズに登園できるようになってから、幼稚園での出来事を毎日たくさん話してくれるようになったことでした。
泣いて別れることや、みんなの前で注目を集めてしまうことは、息子にとって大きな負担だったのかもしれません。
だからこそ、自分の力で幼稚園へ行けた経験が自信につながったように感じています。
私はずっと、
「どうしたら行けるようになるか」
を考えていました。
でも本当に必要だったのは、頑張らせることではありませんでした。
息子が安心して気持ちを切り替えられる仕組みを作ることだったのです。
進級して3か月。
まだ100%ではありません。
それでも長く続いた行き渋りの呪縛から、親子で少しずつ解き放たれているような気がしています。
わが子に合った切り替えスイッチが安心して就学を迎える鍵になる
年長の今だからこそ、自閉症の子に合った切り替えスイッチを見つけることには大きな意味があります。
なぜなら、小学校へ入学すると環境が大きく変わるからです。
新しい先生、新しい友だち、新しい生活リズム。
子どもにとっては、たくさんの変化が一度にやってきます。
だからこそ、就学前のこの1年は、子どもが安心して気持ちを切り替える方法を見つける絶好のチャンスです。
切り替えスイッチは、幼稚園へ行くためだけのものではありません。
不安な気持ちがあっても、自分なりに次の行動へ進む力を育ててくれます。
そして、その経験の積み重ねが、「自分にもできる」という自信につながっていきます。
入学してから慌てて方法を探すのではなく、今のうちにわが子に合った切り替えスイッチを見つけておく。
そうすることで、親子ともに安心して就学の日を迎えやすくなるのです。
自閉症の子の幼稚園の行き渋りに役立つ切り替えスイッチの作り方
①おまじないやスキンシップで切替スイッチを作る
子どもが安心して気持ちを切り替えられるように、登園前に毎回同じ流れを作ってみましょう。
たとえば、
「タッチしてバイバイしようね」
「ハイタッチしてギューッとしたら出発だよ」
「帰ってきたら一緒に公園へ行こうね」
など、登園前に必ず行う約束を決めておきます。
毎朝同じ流れを繰り返すことで、
「次に何が起こるのか」
「どこでママとバイバイするのか」
が分かりやすくなり、安心感につながります。
別れ際に長く説得するのではなく、決まった流れで笑顔のまま送り出すことがポイントです。
② 時間や合図で切り替えスイッチを作る
自閉症の子は、「いつ切り替えるのか」が分かりやすいと安心しやすくなります。
そのため、時間や合図を切り替えのスイッチにするのもおすすめです。
たとえば、
・園バスが来たら出発する
・時計の長い針が12になったら先生のところへ行く
・チャイムが鳴ったら教室へ入る
・先生とハイタッチしたらママとバイバイする
などです。
子ども自身が
「ここで切り替えるんだ」
と分かる合図があると、次の行動へ移りやすくなります。
③ お手紙で切り替えスイッチを作る
小さなメモやイラストをポケットに入れておく方法です。
文字が読める子なら、
「お迎えを楽しみにしているよ」
「幼稚園で応援しているよ」
と短いメッセージを書いておきます。
まだ文字が難しい子なら、ハートや好きなキャラクターのイラストだけでも十分です。
お手紙を見たら「ママがお迎えに来てくれる」と思い出せるようにしておくと、不安な気持ちを切り替える合図にもなります。
もしも「切り替えスイッチ」が効かない朝は?
この記事でお伝えした切り替えスイッチは、
「幼稚園は嫌ではないけれど、朝の切り替えに負担を感じている子」
に、特に効果を発揮しやすい方法です。
もし試しても変化が見られない時は、
「わが子は今、何に困っているんだろう?」
という視点で様子を見てみてください。
運動会や発表会の練習、お友だちとの関係、疲れや寝不足など、切り替え以外の困りごとが影響していることもあります。
また、自閉症の子は疲れや不安がたまると、安心できるママと一緒に過ごしたい気持ちが強くなることもあります。
大切なのは、「どの方法が正しいか」ではなく、「わが子は何があると切り替えやすいのか」を見つけることです。
切り替えスイッチは、子どもによって違います。
だからこそ、ぜひわが子だけの安心して前へ進めるスイッチを探してみてください。
発達科学コミュニケーション アンバサダー
畠中 なつみ






