自閉症の息子は「記憶力が弱い子」だと思っていた
私はずっと、自閉症の息子は覚えておくことが苦手で忘れっぽいんだと思っていました。
何かを取りに行こうと部屋を移動し、別のことをして戻ってきたと思ったら、「あ!そうだった!」と戻ることは日常茶飯事です。
さっき伝えたことも忘れてしまう。
こんな息子の忘れっぽい姿を見ているうちに、私は「息子は記憶力が弱いんだ」と思い込み、この先、学校生活でも困ることが増えてしまうのではないかと不安になっていました。

忘れっぽいのに神経衰弱は強い。説明できなかった息子のちぐはぐさ
記憶が苦手な息子の記憶力に対して、ずっと不思議に思っていることがありました。
それは、息子と勝負する神経衰弱です。
私は、「息子は記憶が苦手。ならば、神経衰弱は苦手なはずだ」と思っていました。
ところが、現実は違うのです。
息子と普通に勝負して、私が負ける。
しかも、一度や二度ではありません。
絵合わせのゲームでも同じです。
私は毎回、「記憶力は弱いハズ…?」と思っていました。
覚えていられない子のはず。
なのに、カードの場所はよく覚えているのです。
どう考えても、息子は「記憶力が弱い」だけでは説明がつかなかったのです。

WISCで崩れた「息子は記憶力が弱い」という思い込み
あるきっかけでWISC検査をすることになりました。
すると、検査の結果、実は息子の記憶力は「平均と同じくらい」だったのです。
本来ならば、親である私は、息子の力を信じて喜ぶところ。
ですが、検査結果を聞いたとき、「そんなはずはない」と思ってしまいました。
なぜならば、息子は生活の中では「ド忘れ」が頻発しているからです。
なのに、ゲームになると驚くほどよく覚えている。
矛盾しているように見える息子の姿を、私はWISC検査の結果説明の時に心理士さんへ相談しました。

すると心理士さんから返ってきたのは、私が想像していたものとは違う答えだったのです。
心理士さんによると、息子は記憶力が悪いというよりも、見る力や形を理解する力が強く、目からたくさんの情報を受け取りやすい可能性があるとのことでした。
つまり、私が「記憶力の問題」だと思っていたことは、記憶力だけでは説明できない話だったのです。
私はそれまで、【忘れっぽい→記憶力が弱い】と単純に考えていました。
ですが実際には、視覚から入るたくさんの情報が影響し、「忘れっぽい」ように見えていただけなのかもしれません。
その瞬間、「記憶力が弱い」という思い込みだけでは、息子の行動は説明できないことに気づいたのです。
WISCで見えてきた自閉症の息子の特性のつながり
例えば、息子がリビングから別の部屋へ物を取りに行くとします。
その途中で花が目に入る。
「きれいだな」
今度はトイレが目に入る。
「そういえばおしっこしたいかも。行っておこうかな」
さらにカバンが目に入る。
「この前のお出かけ楽しかったな」
そんなふうに、目に入るものから次々と考えが頭の中に広がっていく。
そして目的地に着いた頃には、「あれ?何しに来たんだっけ?」となるのです。

心理士さんの話を聞きながら、私は息子の行動を思い出して「なるほどーーー!!」となりました。
息子は記憶力が弱いというよりも、目から入る情報をたくさん受け取りやすい。
だから神経衰弱では、カードの位置や絵柄をしっかり覚えることができる。
一方で日常生活では、移動するたびに新しい情報が次々と目に入り、最初に覚えていた目的が頭の中から押し出されてしまうことがあるそうです。
移動すると忘れる。
だけど、神経衰弱は強い。
長年説明がつかなかった息子のちぐはぐさが、ようやく一本の線でつながった瞬間でした。
WISCの結果を知ってからは、息子の日常の行動も、「なぜ、この行動になるんだろう」と考えながら見るようになったのです。
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変わったのは自閉症の息子ではなく私の見方だった
WISCの結果から息子の特性について理解が深まった頃、担任の先生から授業中の様子を聞く機会がありました。
先生から、「息子君、図工の授業で、質問をしたんです」とご報告をいただきました。
「あらすごい!息子は質問ができるようになった!」と喜んだのも束の間。
「質問ができるのは素晴らしいのですが、先生が作業の説明をしている最中だったので…」と困りごとを教えてくださいました。
そのため、「先生の説明がまだ終わっていません。だから、話を最後まで聞いてから質問にこたえます」と先生は伝えてくださり、息子も理解できたそうです。
説明の最中の質問は、ちょっとまずい、ですよね。
以前の私なら、「最後まで話を聞けないのかな?」と思っていました。
ですが、今では「今聞きたい」のではなく、「今聞かないと忘れてしまう」のかもしれない、と考えられるようになったのです。

家で何気なく見ていた息子の姿にも、少し違う意味が見えてきました。
今、息子はRPGゲームのキャラクターや名前、属性などをまとめることに夢中です。
以前は「好きだから書いているんだな」と思っていました。
ですが今振り返ると、頭の中に入ってきた情報や興味を、自分なりに整理する時間でもあったのかもしれないと思うようになりました。
WISCを受けたことで、一番変わったのは息子を見る私の視点でした。
「忘れる」という行動だけを見ていた頃には見えなかった息子の姿が、「なぜ、この行動になるんだろう」と考えてみることで、少しずつつながって見えるようになったのです。
目の前の困りごとだけを見ていても、本当の理由が見えてこないこともあると思います。
だからこそ私はこれからも、「なぜ、この行動になるのだろう?」という視点を大切にしながら、息子と向き合っていきたいです。
発達科学コミュニケーション
アンバサダー たなか ようこ






