娘が年長だった頃、
私はもう、
「この子と会話することは
望まない方がいいのかもしれない」
と思っていました。
当時私は、
臨床心理士として働いていました。
子どもの発達についても
勉強してきたはずでした。
だけど、
自分の娘の子育ては
全然うまくいかなかったんです。

ことばがなかなか増えない。
何を言っても伝わらない。
娘が何を思っているのかも
わからない。
私自身も
娘に怒ってばかりでした。
そして娘が年長の頃、
言語聴覚士の先生から
こんなお話がありました。
「こんなに理解しているのに、
ことばを話すことが難しいので、
話すことではなく、
手話やひらがなで
気持ちを伝えられることを
目指しましょう」
その話を聞いて、
私は、
娘がことばを話すことを
諦めていました。

「ママ」って呼んでほしい。
娘が思っていることを
聞いてみたい。
いつか娘と
おしゃべりしてみたい。
そんなことは、
もう望まない方がいいんだ。
そう思っていました。
だけど、
たった一人。
娘の成長を
信じてくれた先生がいました。
療育でお世話になっていた
保育士のA先生です。
A先生が私に言ったのは、
「困ったことを
言えるようにしましょう」
ということでした。
そのことばを聞いたとき、
私はハッとしました。
会話なんて
できなくてもいい。
たくさんおしゃべりできなくてもいい。
だけど、
この子が困ったときに、
自分で「困った」を
伝えられるようにはしてあげたい。
そう思ったんです。

家では私が
娘の表情を見たり、
様子を見たりして、
「トイレかな?」
「何か嫌だったのかな?」
と察してあげられる。
だけど、
小学校に入ったら、
ずっと私が隣にいるわけではありません。
私がいないところで、
「トイレに行きたい」
「お腹が痛い」
「嫌だった」
「助けて」
そんな、
自分を守るためのことばを
伝えられるようになってほしい。
そして今、
娘はことばで
自分の思いを伝えています。
私が一度は諦めた、
娘との会話もできています。

だから私は、
今、ことばがなかなか増えず
「この子はいつか
話せるようになるのかな」
と思っているママに伝えたいです。
会話ができる未来なんて
まだ想像できなくてもいい。
だけど、
「トイレ」
「痛い」
「嫌」
「助けて」
困ったときに、
自分のことばで伝えられる子にしたい。
そう思うなら、
今からおうちで
できることがあります。
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