おうち療育

新幹線が苦手な自閉症の息子が「新幹線のるよ」と言えた小さな成功体験と事前準備

2026年4月30日

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「気持ちが伝わらず癇癪になっていた子が、少しずつことばで伝えてくれるようになりました」(年長男の子のママより)
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新幹線が苦手で乗りたくないと言っていた自閉症の息子。酔いや匂い、不安への準備を重ねて一駅乗れたことで、「新幹線のるよ」に変わった小さな成功体験の記録です。実際に私がした準備も具体的にご紹介します。

動物が大好きな息子をもっといろいろな場所に連れて行きたかった


私には支援級4年生になる息子がいます。


息子は知的障害と自閉症の診断を受けています。


動物や昆虫など、生き物が大好きな子です。


図鑑やDVDを見ながら、好きな動物がどんどん増えていき、

「デンキナマズ見たい」
「みずだこ見たい」
「モンハナシャコ見たい」
「カバ見たい」
「アナコンダ見たい」

などと、ちょこちょこ伝えてくれます。


できれば連れて行ってあげたい。


私にはいつもそんな気持ちがありました。


実際に、デンキウナギとデンキナマズを見に行った時には大興奮で、しばらく水槽に張り付いていたこともあります。


帰宅後も、とても嬉しそうに

「デンキウナギ見たね」
「ビリビリしてたね」
「ご飯食べてたね」

と、いろいろ話してくれました。


私自身も出かけることが好きなので、息子の好きなものに付き合って出かけることは苦ではありません。


息子のやりたいことはできるだけ叶えてあげたいですし、たくさんの体験を通して、息子の世界を広げてあげたいと思っていました。

新幹線に乗るたびに酔ってしまい親子で遠出を諦めていた


ですが、息子が見たい動物が家の近くの動物園にはいないこともよくあります。


そうなると、遠出が必要になります。


「いろんな動物を見にいきたい」


そんな息子にとって、大きな壁になっていたのが新幹線でした。


小学1年生になった頃から、息子は新幹線に乗るたびに酔うようになり、ひどい時には吐いてしまうこともありました。


その経験が重なってからは、

「新幹線は乗りたくない」
「車でいく」

と話すようになり、車で行ける範囲でしか動けないことが増えていきました。


そんなある日、息子が「ハシビロコウが見たい」と伝えてくれました。


調べてみると、上野動物園がいちばん現実的な候補でした。


新幹線に乗れれば、行きやすい場所です。


でも、乗車時間は3時間弱。


その話をすると、息子はすぐに行かないと答えました。


新幹線に乗れないことで、息子のやりたいことが叶えられない。


やりたい気持ちがあっても、最初から諦めてしまう。


その様子をみるのが、私はとてもつらかったです。


そして、私自身も本当はもっと出かけたいタイプです。


お互いのためにもなんとかして新幹線に乗れるようになりたいと思うようになりました。

自閉症の息子が新幹線が苦手な本当の理由は?


そこで改めて、なぜ息子が新幹線に乗れないのかを考えてみることにしました。


実際に、酔って気持ち悪くなってしまう事実はあります。


だから、気合いでどうにかなることではないのは明らかでした。


一方で、酔ってしまう理由は体だけの問題ではない気もしていました。


息子は不安が強いタイプです。


過去の失敗体験が記憶に残りやすく、嫌だったことを何度も思い出してしまいます。


過去のつらい経験を思い出して不安が強くなり、気持ち悪さも強く出てしまうのではないか。


私はそんなふうに感じていました。


そこで、本人にも嫌な理由を直接聞いてみました。


すると息子は、
「新幹線は臭いからいや」と話してくれました。


たしかに息子は、以前、放課後デイの車でも「臭いからいや」と言って乗れないことがありました。


ですが、マスクをして乗ることを繰り返しながら、少しずつ「大丈夫だった」を積み重ねることで、最終的にはマスクなしでも乗れるようになった経験があります。


なので、におい対策などの不安を減らす工夫とスモールステップで大丈夫だった経験を増やしていく。


この方向で進めてみようと決めました。

新幹線に乗りたくなかった息子が笑顔で乗れた事前準備


まずスモールステップで、最初の目標はとても小さく設定しました。


新幹線に一駅分だけ乗ること


この小さなゴールに向けて、さらにできる準備を重ねていきました。


息子が新幹線を嫌がる理由を考えた時に、大きいと感じた不安要素は次の2つでした。


・においや気持ち悪くなること

・見通しが立たないこと


そこで、この2つの不安を少しでも減らせるように準備をしました。

◇においや気持ち悪さへの対策


マスクはもちろん、マスクに貼れるアロマシートにペパーミントのアロマをたらして使うことにしました。


ペパーミントには防臭効果がありますし、息子も嫌いな匂いではありませんでした。


さらに、耳鼻科で酔い止めも処方してもらいました。


これまでも市販の酔い止めは使ったことがありましたが、

「病院でもらった薬なら効きそう」
「病院でもらった薬なら強そう」

という感覚が、私にも息子にもありました。


実際に薬の成分を比べたわけではありませんが、薬があるから大丈夫かもしれないと思えること自体が、不安を軽くしてくれたように感じます。

◇見通しが立たないことへの対策


息子は時間を気にするタイプなので、家を出てから帰宅するまでの流れを、時間の経過に合わせて分かるようにスケジュール表を作りました。


何時に乗るのか
何時に降りるのか
何時頃に帰宅できるのか

など、時計の絵を使って見える形に。


新幹線に乗ることだけでなく、息子が行きたがっていた公園に行くことや本屋さんに行くことなど、息子が喜びそうな予定も入れて作成しました。


ここまで準備して、ようやく挑戦できるところまで持っていけた気がしました。


とはいえ、当日まったく平気だったわけではありません。


また気持ち悪くなったらどうしよう。
またつらい思いをさせてしまったらどうしよう。


そんな気持ちは、やはりありました。


内心はかなりドキドキしていましたが、吐いてしまった時に備えた準備はしていましたし、帰りは別の交通手段でも帰れるように考えていました。


だからこそ、私自身も絶対にうまくいかなければいけない、と追い詰めすぎずにすんだのだと思います。


実際の乗車中は、息子が好きそうな絵本を私が聞かせたり、好きな話題で会話をしたりして、意識を別の方向に向けるようにしました。


絵本を実際に見ると酔いやすいので、見るのではなく聞くだけにしたのも工夫のひとつです。


すると、息子は気持ち悪くならず、ニコニコ、ゲラゲラ笑いながら乗車時間を過ごすことができました。


行きの新幹線が大丈夫だったことで、帰りに「もし嫌だったら普通電車でもいいよ」と伝えた時にも、「新幹線乗るよ」と自分から言えたのです。


あの瞬間は、本当にうれしかったです。

小さな成功体験が息子の自信と行きたい気持ちを引き出してくれた


たった一駅の新幹線旅でした。


けれど、息子にとっても私にとっても大きな一歩になりました。


何よりうれしかったのは、一駅乗れた経験が息子の自信につながったことです。


帰宅後、息子は

「上野動物園にいきたい」
「新幹線のるよ」


と伝えてくれました。


以前は、新幹線に乗ること自体が嫌で、行きたい気持ちがあっても最初から諦めていた息子です。


そんな息子の口から、行きたい場所と挑戦したい気持ちが一緒に出てきたことに、私は胸がいっぱいになりました。


今回の経験を通して改めて感じたのは、不安が強い子には、まず安心できる準備が必要だということです。


いきなり大きな目標に向かうのではなく、できそうな大きさまで小さく分けて、「大丈夫だった」を積み重ねていく。


その積み重ねが、自信になり、次のやりたいにつながっていくのだと思います。


上野動物園に行くまでに、もう少し短い距離の新幹線旅を計画して、次の長期休みには上野動物園に行けたらいいなと思っています。


息子の世界を少しずつ広げながら、息子の「行きたい」「やってみたい」をこれからも応援していきたいです。

発達科学コミュニケーション
アンバサダー 東原あや

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