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3歳になっても外で歩かない自閉症の息子に怒鳴っていた毎日
私には自閉症と重度知的障がいの診断が出ている息子がいます。
3歳になっても外に出たら歩かないで抱っこばかりの息子。
歩かせようとしてもすぐ座り込んで泣いてしまいます。
家の中では歩けるのに、外では歩けない姿を見て悔しくなり、時には「歩いて!」と怒鳴ってしまったこともありました。
そして、周りの目も気になり「もう抱っこした方が早い!」とその場から逃げるように抱っこして帰る日々が続いていたのです。
「育て方がダメなの?」自閉症の息子が歩かないことで募った育児への不安
息子と距離を離しても追いかけてこない。
脇を持ち上げて歩かせようとしても歩かない。
周りからは「甘やかせすぎ、座り込んで泣いていたら放っておいたらいい」と言われた時はとてもショックでした。
「自分の育て方がダメなのか」と自分自身を責めることも。
わが子に歩いてほしくて、調べたことを試してみました。
・一度抱っこして落ち着かせる
・数歩先の電柱を指さして「〇〇まで歩こう」と見通しをたてる
・「10秒だけ歩いてみよう!」と短時間のチャレンジを提案
ですが、うまくいかず、どれも我が子には届きませんでした。
「本やネットの通り全く進まない!」と落胆して不安になったのを覚えています。

歩かない自閉症の子に必要だったのは練習より”安心感”
運動機能を高めることで脳は育つという結果が脳科学では出ています。
おしゃべり上達メソッドの上級講座であるnicotto講座で、「子どもの脳の活動量を満たすには、1日平均13000歩もしくは1週間で6万歩歩くといい」と学びました。
なので、自閉症で重度知的障がいの息子の脳を伸ばすためにも、やっぱり息子の外で楽しく歩く姿を諦めたくなかったのです。
合わせて子どもの困った行動の前の状況が大事ということを学び、歩かない子どもの行動の前の状況を下記のように観察することにしました。
前の状況:( )
困った行動:歩かない
前の状況は何か?と考えたところ
状況:毎日通るような慣れている1分くらいの短い道(公園、川沿いなど)
行動:歩く
状況:バイクや車通りの多い道
行動:歩かないで座り込む
ということが見えてきました。
そうか!歩かないにも理由はあり、息子の場合は
①聴覚過敏があり、車やバイクなど大きな音が次々来ることに、なかなか一歩を踏み出せずにいる
②どこに行くのかわからない不安を感じている
と仮説を立てました。
そして、息子が歩かないで抱っこばかり求めるのは、怠けではなく車やバイクの音が怖い、どこに行くのか不安、歩く楽しさを知らなかったのかもしれない!!と息子のことを考えるようになりました。
また、見通しが立たないこと、行き慣れない場所、特定の音などに対して不安を強く感じることがあります。
歩かない理由を1つ1つ考えて工夫していくことで外でも歩けそうだ!と、一筋の希望が見えてきたのです。

外で歩かない自閉症の息子がワクワクしながらお散歩できるようになったママの対応3選
どうすれば改善できるか、実践した3つの対応をご紹介します。
①まず困った行動の前の状況を考える。
状況:新しい道が怖い、バイクの音が怖い、車の音が苦手、どこまで歩けばいいか見通しが立たない
困った行動:歩かない
「状況」は考えられるものをたくさんあげていきました。
②安心できる場所で「歩く経験」を積み重ね、楽しさと自信を育む
息子は、公園や川辺など、行き慣れた場所であれば落ち着いて歩けることが多く、特に車やバイクが通らない静かな環境が安心材料でした。
また、手に何かを持つと安心するタイプだったので、お気に入りのおもちゃを持たせてみたところ、スタスタと歩いてくれるということも発見!
そんな安心できる環境で、少しずつ歩く経験を積むことから始めていくことに。
歩いている時は、褒めたり、息子が今見ているものを言葉で伝えたり、気持ちを代弁してあげたりすることを意識しました。
こうして「歩けた!」という小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に歩くことへの自信をつけていったのです。
③できたところだけに注目して、少しでも歩いたらしっかり褒める!
おしゃべり上達メソッドの「肯定的な注目を増やす」を特に意識して続けました。
「歩けてるね」と歩いてる時は声をかけ、座り込んだら「ここまで歩けたね」と、できたことだけ褒め、泣いて座り込む行為には反応しないようにします。
とにかく歩くって楽しいと思ってもらいたい一心で、「歩かない」と意思表示された時も、まずはその気持ちを受け止め、寄り添うことが大事だと気づきました。
特に最初のころは、親の気持ちの余裕があるときに散歩の練習をした方が、少しずつ歩く距離が伸びていったので、子どものペースに合わせてあげやすかったです。
練習を始めて1ヶ月程経った頃、公園で遊んでいると、急に初めての道に向かって走りだしました。
外への不安が軽減し、興味の幅が広がった瞬間だったのだと思います。
そこから散歩に目覚め、今ではいいサイズの石や木の実を探したり、後ろ歩きや横歩きで歩いたりと今はただの道を楽しそうに冒険しながら散歩しています。
今では、目的もないただの散歩も1時間以上できるようになりました。
やっぱり本人が楽しいと思わないと長く続けてくれないのだなと痛感しました。
さらに、散歩を続ける中で、手をつなぐ時間が増えてきた頃のことです。
自閉症で目が合いにくく、発語もまだなかった息子が、ふと私の顔をのぞき込んで、ニコッと笑ってくれたんです。
そのとき、「楽しいね」って言ってくれたような気がして……
「こんな瞬間が来るなんて」と感動したのを覚えています。
自閉症の息子との「楽しい」経験の積み重ねが、わが子の会話力を伸ばす!
子どもを観察して何が原因なのか考えることが、自閉症の子の行動の悩みを解消させるための第一歩です。
約3年もの間、息子が外で歩かないことに悩み続けていました。
しかし、本気で変わりたいと決意して行動した結果、約3ヶ月で1時間も散歩できるようになるなんて、想像もしていなかったので、本当に嬉しかったです。
おしゃべり上達メソッドを学んだことで、息子は私の声に反応して行動できる場面が増えてきていました。
また、日々の生活の中で「褒めること」を意識して関わってきたおかげで、息子は自信を持ち、「やってみよう!」と思える気持ちが芽生えていたことも、大きな後押しになったのだと感じています。
今後も息子の「楽しい」「できた」の経験を積み重ねられるように。
そして、親子で会話しながら散歩できる日を目指していきたいと思います!

発達科学コミュニケーション
アンバサダー 岡本 芽依





