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自閉症の息子とのお出かけを心から楽しみたかった私
私には自閉症で中度知的障がいの息子がいます。
3歳のころ、話せる言葉はわずか。
会話はほとんど成り立ちませんでした。
それでも、一緒に出かけて笑い合う時間に憧れていました。
水族館で魚を見て驚く顔。
遊園地で手をつないで歩く姿。
電車を見てはしゃぐ様子。
そんな時間を当たり前のように過ごせる親子になりたいと思っていました。
せっかく出かけるのだから、全部楽しませたい。
お金も払ったし、時間もかけた。
たくさん経験させることが、親の役割だと信じていました。
いつも癇癪…なんで私たちだけ…うまくいかないお出かけで気づいた私の苦しみ
現実は思い描いたものとは違いました。
手をつなげない。
突然走り出す。
止めると大きな癇癪。
周囲の視線が集まります。
同じ年ごろの子が母親と穏やかに歩く姿を見るたび、胸が締めつけられました。
「また癇癪だ…みんな見てる…早く帰りたい。」
「周りはみんな楽しそうなのに、なんで私たちだけなの…」
本当に苦しかったのは、子どもの癇癪そのものより、 みんなの中で私たちだけがうまくできないと感じてしまうことでした。
周りの親子が笑って見えるほど、恥ずかしく、取り残されたようで、胸がぎゅっと苦しくなったのです。
自閉症の子とのお出かけは、難しいものだと諦めかけていました。
「お出かけのゴールは1つでOK」私の視点がガラッと変わった今川ホルン先生の言葉
息子が5歳のとき、Nicotto Projectに出会い、学びを始めました。
転機は、Nicotto講座を主催する今川ホルン先生の言葉でした。
「全部できなくていいんです。
お出かけのゴールを1つにして、“できた”という成功体験を積ませることが、わが子の脳を育てます。」
先生の言葉に、はっとしました。
私は「全部楽しませること」を目標にしていました。
でもそれは、今の息子には高すぎるゴールだったのです。
必要なのは量ではなく、“できた”という感覚ではないか。
そこで決めました。
お出かけのハードルを下げ、ゴールを一つにする。
・ごはんを食べられたら成功
・アトラクションに1つ乗れたらハナマル
・目的地に着けたらゴール
全部ではなく、一つ。
「1つだけでいいんだ、これなら息子にもできそう…。」
心がふっと軽くなりました。
わが子目線のゴール設定でお出かけの成功体験をつくれた水族館での出来事
5歳の息子と水族館に行った日のことです。
薄暗い館内に入った瞬間、息子の表情がこわばり、長くはいられないと感じました。
以前の私なら、せっかく来たのだからと無理に進んでいました。
しかしその日のゴールは「何か一つ楽しめたらOK」。
館内を出て、お土産コーナーへ向かいました。
するとぬいぐるみを手に取り、息子が嬉しそうに笑っていたのです。
一つでも楽しむことができた。
決めたゴールをやりきれた。
私も息子も、小さな「できた」という成功体験をつくることができました。
ですが、結局魚をほとんど見ないまま帰ることになり、「水族館に来た意味はあったのだろうか」という迷いは、正直ありました。
けれども、帰り道に息子が満面の笑みで、こう言ってくれたんです。
「楽しかった!!」
怖かった記憶の方が強いと思っていたので、息子の意外な言葉に驚いたのと同時に、
「これで良かったんだ。」
「息子が”できた!楽しかった!”と感じることが、私にとってもこんなに嬉しいんだ。」
と、胸の奥が熱くなりました。
そして、息子とのお出かけで大切なことに気がついたのです。
「息子の笑顔を見れることが、お出かけの1番のゴールなんだ」
息子と水族館へお出かけした日のことは、忘れられない1日となりました。
小さなゴールの積み重ねで変わった自閉症の息子とのお出かけ
ゴールを一つにすると、達成しやすくなります。
達成できると、成功体験が積み重なり、成功体験が増えると、次の挑戦ができるようになります。
現在、小学1年生になった息子は、新幹線での長距離移動もできるようになりました。
予定外の電車変更があっても、落ち着いて話を聞き、切り替えられる場面が増えたのです。
特別な方法ではありません。
自閉症の息子とのお出かけで、一つのゴールを決め、小さな成功を積み重ねてきただけです。
全部できなくていい。
一つできたら、それで花丸。
たった一つのゴール設定が、わが子の「できる」を増やしていきます。
これからも、自閉症の息子と全国色んなところへお出かけをして、たくさんの成功体験を積みながら、わが子の脳をもっと育てていきたいです。
発達科学コミュニケーション アンバサダー
畠中 なつみ







