知的障害の子がつまずく絵本理解の理由
絵は楽しめても物語が届かないのはなぜ?
絵本を読んであげているのに、子どもは絵ばかり見ていて物語の内容には反応がない…。
そんなふうに感じたことはありませんか?
実はそれ、「ちゃんと聞いてない」わけじゃないんです。
知的障害のある子どもは、視覚的な情報(=絵)にはパッと反応できるのに対して、言葉の意味をイメージで捉えて、物語としてつなげていく力は、まだ発達途中のことが多いんです。
絵本のストーリーを理解するには、こんな力が必要になります:
・言葉を聞いて覚える「ワーキングメモリ」
・出てきた言葉をイメージに変える「想像力」
・絵と言葉を結びつける「統合する力」
・時系列を追う「論理的思考」
どれも、抽象的な処理をともなうため、 “絵は楽しいけど、お話はピンとこない” という状態になることがよくあるんです。

今こそ絵本を “ことばの種まき” に変えるとき
知的障害の子にも伝わる絵本体験は「今」から始めよう!
「絵本はまだ難しいかも…」
「読み聞かせしても伝わらない…」
そんなふうに思ってしまうと、つい絵本から遠ざかってしまいがち。
だけど、絵に反応している今こそ「ことばの世界」を広げるチャンスなんです。
理解していないように見えるときでも “一緒に見る・感じる・やってみる” 体験が、ことばと心の種まきになります。

知的障害の息子がホットケーキで見せた変化
私の息子も、まさにそうでした。
絵本の表紙や絵にはすごく喜ぶのに、読み聞かせをしても無表情。
ストーリーのどこが面白いのか、まったく伝わっていないように感じていました。
そこである日、絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』( わかやま けん 作・こぐま社 )を見ながら、本と同じ順番でホットケーキを一緒に作ってみたんです。
するとびっくり!
絵本の中でホットケーキが「ぷつぷつ」「ぺたん」と進むページに合わせて、ホットプレートの上のホットケーキをジーッと見て、笑って、指をさして…。
まるで、絵本と現実がリンクしたようでした。
それ以来、その本は息子のお気に入り。
“言葉が意味を持って、自分の世界とつながった” のです。
知的障害のある子に届いた我が家の工夫
ー知的障害の子に届いた我が家の工夫 × こんなふうにやってみよう!ー
やり方はとってもシンプル!
我が家でうまくいった実例と、他の絵本にも応用できるヒントをセットで紹介していきます。
①絵本と現実がつながる「まねっこ体験」
ホットケーキで物語が体に入ってきた!
《わが家の実例》
『しろくまちゃんのほっとけーき』を見ながら、ページに合わせてホットケーキを一緒に焼いてみたら、絵と現実がリンクして大喜び!
それ以来、お気に入りの絵本に。
《こんなふうにやってみて》
絵本に出てくる「ホットケーキ」「おふろ」「買い物」など、日常の中で絵本と同じことをやってみるだけで、物語が “自分の体験” になります。

②絵本の場面に声を重ねる「実況中継」
知的障害の子にも伝わる “ことばの橋わたし”
《わが家の実例》
「わあ、絵でもぷつぷつしてるね〜」
「ひっくり返すよ〜」
と、息子が見ている絵やホットケーキに合わせて実況。
すると表情がパッと変わり、言葉が届くのを感じました。
《こんなふうにやってみて》
「くまさん、うれしそう!」
「おふとんに入ってるね〜」
など、絵に言葉を添える実況中継が理解へのかけ橋になります。
③絵本の理解を深める「気持ちの共有」
“わかる” より “楽しいね” が伝わる入口に
《わが家の実例》
「ホットケーキ、おいしいね」
「しろくまちゃんと一緒だね」
と声をかけると、息子がニコッ。
「意味が通じてる」よりも、「気持ちがつながってる」実感の方がずっと大事でした。
《どの絵本でもできる》
読み聞かせの中で、
「うれしいね」
「おいしそうだね」
などの気持ちの言葉を添えるだけでOK。
“わかる” 前に、 “楽しい” がことばの土台になります。
絵本は、「読む」ものではなく “一緒に感じて、重ねていく” もの。
子どもが言葉を理解する前に、まず「伝わった!」という体験が必要です。
だからこそ、絵に反応しているその瞬間から、絵本を “ことばの種まき” に変えていきましょう。
発達科学コミュニケーション
トレーナー 岩村 萌永(いわむら もな)






