目次
スモールステップが知的障害児の “できた” を増やす
「これ、とって」と言われてすぐに動ける子どももいれば、なかなか反応ができない子どももいます。
なぜ同じ指示でも、できる子とできない子がいるのでしょうか?
答えは、動作ができるまでに必要な小さなステップが子どもによって違うからです。
知的障害のある子どもたちは、たくさんの小さな “ピース” をひとつずつつなげていく必要があります。
たとえば、お母さんに「これ、とって」と言われたとき、子どもがその動作を実行するまでには実は多くのステップがあります。
- お母さんの声を耳で聞く
- 「これをとってって言ってるな」と言葉の意味を理解する
- 注意を切りかえて、どこを見ればいいか考える
- お母さんの指さしや視線から「何を指しているか」を推測する
- 「どうやって手を動かすか」をイメージする
- 心と体を「よし、動くぞ!」という状態にする
- 実際に手を伸ばし、物をつかむ
- ちょうどよく持てるように力加減を調整する
発達がゆっくりな子どもたちにとって、この一連の流れは決して簡単ではありません。
「意味がわからない」「どれを取ればいいのかわからない」「体が思うように動かない」「気持ちがついてこない」——
こうした小さなつまずきがいくつも重なって、「できない」につながってしまうのです。
これはちょうど、とてもピースの多いジグソーパズルに取り組んでいるようなもの。
健常の子が少ないピースでできることでも、知的障害のある子には、より細かく分けたステップが必要なのです。
ジグソーパズルは、「できそうなところから」「少しずつ」作っていきますよね。
同じように、子どもの行動も小さな “できた” を少しずつ組み合わせて、やがて一つの動作にしていく。
それが「ジグソーパズル穴埋め方式」の考え方。
「できるまで待つ」のではなく、できるピースを一緒に見つけ、つないでいくことが大切なのです。

知的障害の子が今動くことで変わる毎日の生活
では、なぜ「ジグソーパズル穴埋め方式」をできるだけ早く始めることが大切なのでしょうか?
知的障害のある子どもは、情報の処理がゆっくりで、一つの動作や行動を身につけるまでに時間がかかります。
だからこそ、焦らずにゆっくりと、自分のペースでできることを増やしていくことが大切です。
成長のチャンスは一度きりではありません。
早くから少しずつスモールステップで取り組むことで、子ども自身の「できた!」の積み重ねが増え、自信が育ちます。
自信がつくと、次のチャレンジにも意欲的に取り組めるようになります。
逆に、始めるのが遅くなってしまうと、小さなつまずきが積み重なりやすく、できるはずのこともなかなか身につかないまま時間が過ぎてしまうこともあります。
だからこそ、今この瞬間から子どもができるピースを見つけ、一緒に組み合わせていくことが、将来の「できた!」をどんどん増やす近道なのです。

知的障害の息子がたくさんの ”できた” を重ねて育てた自立の一歩
私には身体障害があり、最重度の知的障害をもつ息子がいます。
手先も不器用で、身の回りのことを一人で行うことができません。
そこで、まずはTシャツを一人で着られるように練習を始めました。
Tシャツを着る動作は大まかに分けると、①着るための準備、②頭を通す、③腕を通す、④身体全体にTシャツを整える、の4つのステップです。
しかし実際には、①着るための準備だけでも、
- Tシャツがどこにあるかを探す
- Tシャツを視覚的に見つける
- Tシャツに手を伸ばす
- 手でTシャツをつかむ
- 前後・上下を確認する(タグを見るなど)
- 正しい向きに直す
と、さらに細かいステップがあります。
これら全てを合わせると、実に22ものステップにのぼります。
一度にそんなに多くのステップを踏むのは、私も息子も大変です。
そこで、難しい部分は無理に進めず後回しにし、できることから取り組み、できない部分にはまた戻って練習する、という方法を繰り返しました。
そうしていくうちに、息子は少しずつ自分で服を着られるようになったのです。

知的障害の子がジグソーパズル穴埋め方式で自信を積み重ねる方法
では、具体的にどのように進めていけばいいのでしょうか?
やり方はシンプルです。
まずは、チャレンジしようとしている動作をできるだけ細かく分解します。
たとえば「Tシャツを着る」なら、袖を通す、首元を通す、など一つひとつの小さなステップに分けるイメージをしましょう。
次に、その中で「できそうなところ」から取り組みます。
難しい部分にいきなり挑戦するのではなく、簡単にクリアできるピースを少しずつ積み重ねていくことが大切ですよ^^
これにより、子どもは「できた!」という自信を持ち、次のステップに挑戦する意欲がわいてきます。
そして、最後にそれらの小さなピースを組み合わせて、一つの動作を完成させていきます。
ジグソーパズルと同じように、焦らずじっくりと取り組むことで確かな成果につながっていきますよ!
知的障害のある子どもたちにとっては、一度に大きなことを求めるよりも、小さな「できた!」をたくさん積み重ねることが何よりも大切です。
スモールステップでの挑戦を通じて、少しずつ出来ることを増やしていきましょう。
発達科学コミュニケーション
トレーナー 岩村 萌永(いわむら もな)






