私の父は
私が長女を妊娠中だった13年前
癌でこの世を去りました。
命のバトンを
次の世代に手渡すような
タイミングでの別れ。
お腹の中の娘を抱えながら
私は父のことを
何度も思い出しました。
「この子には
命を受け継ぐ意味
をこめた名前をつけたい」
そう思い
たどり着いたのが
河井酔茗(かわい すいめい)の詩
「ゆずり葉」です。
この詩は
古い葉が新しい葉に
道を譲る姿を通して
命のつながりや
人から人への思いの継承
を描いたもの。
読むたびに、父から私へ
そして私から娘へと
受け渡されていく
命の物語を感じます。
娘の名前は
「柚葉(ゆずは)」。
「ゆずり葉」のように
誰かに温かく
バトンを渡せる人に育ってほしい。
という願いを込めました。
今回は
その詩を皆さんにも
ご紹介します。
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ゆずり葉
河井酔茗
子供たちよ。
これは譲り葉の木です。
この譲り葉は、新しい葉が出来ると、
入れ代わって古い葉が落ちてしまうのです。
こんなに厚い葉、
こんなに大きい葉でも、
新しい葉が出来ると無造作に落ちる。
新しい葉にいのちを譲って――。
子供たちよ。
お前たちは何を欲しがらないでも、
すべてのものがお前たちに譲られるのです。
太陽の巡るかぎり、
譲られるものは絶えません。
輝ける大都会も、
そっくりお前たちが譲り受けるのです。
読みきれないほどの書物も、
みんなお前たちの手に受け取るのです。
幸福なる子供たちよ、
お前たちの手はまだ小さいけれど――。
世のお父さん、お母さんたちは、
何一つ持ってゆかない。
みんなお前たちに譲ってゆくために、
いのちあるもの、よいもの、美しいものを、
一生懸命に造っています。
今、お前たちは気が付かないけれど、
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のようにうたい、花のように笑っている間に、
気が付いてきます。
そしたら子供たちよ、
もう一度ゆずり葉の木の下に立って、
ゆずり葉を見るときが来るでしょう。
※引用:『酔茗詩集』岩波文庫
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今日はお盆ですね。
ご先祖様に感謝を伝えたいと思います。